夕暮れの翼

バイセクシュアルの翼がこれまでのこと、今のこと、未来のことなどを含めて感じたことをそのままオブラートに包まず書ける様にと作ったスペース。

思い出話をひとつ 2/4

 

公園についた俺ら。

 

 

彼の名前は「龍」と言った。

 

 

偽名だとしてもどうでも良かった。

 

 

龍は色黒な細い顔、細いからだに

金色の長髪をなびかせ長ーいコートに身を包んだ奇抜なファッションで

 

 

のどかな公園に全く合わない。

 

 

龍だけ浮いていた。

 

 

そんな人目を気にせず龍は歩き続ける。

 

 

だから俺も堂々とついて行った。

 

 

 

たかが公園で感じるこの安心感。

 

 

着いたのは公園の池。

 

 

どうやらボートに乗るらしい。

 

 

え!?

 

 

友だちグループでしか今までボートなんか乗った事無いよ。

 

 

俺「え!?ボート乗るの?」

龍「うん。」

俺「・・・」

龍「乗らないの?」

俺「乗る!」

 

俺の方が年上なのに

チケットをさっさと買ってくる龍。

 

 

17のくせになんの仕事してるか気になったけど

そんなのどうでも良かった。

 

 

そうやって俺らは男女カップルが多い中

手漕ぎボートに2人で乗る。

 

 

 

不思議と何にも恥ずかしくなかった。

 

 

俺の性格だと、男2人でボートなんて

周りの目が気になって出来ないはずなのに。

 

 

2人で向かい合ってボートを漕ぎながら

 

 

お互いの今までの話をする。

 

 

そういう話は出会うと大体お決まりだよね。

 

 

やがてボートは端っこの岸の方

だけど人影のほとんどないところに止まる。

 

 

葉がやっと芽吹きだすんじゃないかなというくらいの木の下。

 

 

 

こっちにおいでよ。

 

 

龍が言う。

 

 

そんなの恥ずかしくて出来るかよ。

 

 

「いいからおいでって。」

 

 

そうやって言えば俺が恥ずかしがりながらも

来る事わかってる様な言い方。

 

 

華奢なのに大きくて何故か包容力のある龍の脚の間に座る。

 

 

大きな男2人が体をくっつけ同じ方向を向いて

何をするでもなく、泊まったボートの上に休まる。

 

 

 

つづく。